東京高等裁判所 昭和39年(う)1560号 判決
被告人 町田吉司
〔抄 録〕
所論は、原判決は別表押収現金目録記載の金員を本件金銭供与申込罪の組成物件であり、かつ被告人以外の者の所有に属さないものとして没収したのであるが、これら金員はその全部が必ずしも被告人の所有ではないのであるから、右没収はこの点において法令の適用を誤つた違法のものであるという趣旨に帰するものである。
よつて検討すると、原判示によれば、被告人等が供与の申込をした金員は合計一一万八千円となり、又原判決の別表押収現金目録記載の金員は合計一一万一千円となるのであるが、右目録記載の金員はいずれも郵送された者がその受領を拒んで警察等へ差出したものであるから、郵送を受けた者の所有物とはいい難く、すなわち差出人側の所有権に未だ変動があるとは考えられないので、進んでこの金員はいかにして調達されたかを検討すると、被告人の検察官に対する昭和三八年六月一一日、同月一二日付各供述調書(第二冊一二六七丁、一二七八丁)及び東市郎の原審公判廷の供述(第二冊九六四丁)によれば、被告人は原判示選挙人を含む選挙人に対し合計二四万一千円の現金を郵送したものであり(従つて、起訴されたのはそのうちの一部となる。)、この二四万一千円は被告人の月給約三万五千円、母から借用した一五万円、候補者成沢忠兵衛及び選挙運動者東市郎から預かり保管していた約三万円と約八万円の合計約一一万円(これらはいずれも陣中見舞として候補者へ他より寄付された金である。)以上合計二九万五千円のうちから支出したものであることを認めることができる。従つて、被告人の月給及び母より借用した金は被告人の所有の金と考えられるけれども、その余の金は必ずしも被告人の所有に属する金とは認め難く、又前記目録記載の金員の中には被告人の所有に属する金も含まれているかも知れないけれども、それがどこに該当するか特定し難いので、原判決が右目録記載の金員をすべて被告人以外の者の所有に属さないとしてこれを没収したのは、結局法令の適用を誤つたことに帰し、この誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。
(足立 栗本 上野)